『竹のさと通信』8月号


<コーナー担当者 大原>
かいじゅうたちのいるところ

著=モーリス・センダック  

昨年、映画化された同名作品の原書となるのが、アメリカの絵本作家モーリス・センダックによる「かいじゅうたちのいるところ」だ。最近、DVDを借りて映画を見てみたら、全くの駄作でがっかりした。つまらない解釈や脚色が多すぎ、原作のムードが完全に損なわれている。自由奔放なマックスの内面世界は、つらい現実からの逃避として描かれ、野蛮であるべき怪獣たちが、繊細な感情と社会性を持ってしまっている!原作の大ファンである子どもたちともども憤慨しながらの映画鑑賞会となった。また、改めて原作の魅力を思い知った。
 ある日、いたずらが過ぎた主人公マックスは、お母さんから謹慎を命じられ、自室に閉じ込められてしまう。ところが、見慣れた部屋の床からは木が生え、壁や天井がなくなり、やがて現れた大海原へ、マックスはイマジネーションの小船を浮かべて航海に出る。そして、かいじゅうたちのいるところへとたどりつくのだ…。
 もともとイラストレーターだったセンダックの絵と、文体の持つリズム感に、引き込まれない人はいないと思う。爪を立て、歯をむき出し、ギョロリと目をむいた怪獣たちのユーモラスながらも恐ろしい姿と、着ぐるみ姿の小さなマックスの堂々たる王様ぶり、この対比の面白さは、他の絵本で味わったことがない。
 子どもの内面宇宙、この本はその無限の世界を見事に描き、何度読んでも飽きることの無い豊かさをたたえている。

出版:冨山房 (1975/12)
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